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千寿の楽しい歴史
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2016山幸彦海幸彦縁起絵巻(天井絵)の解説その五・千寿の楽しい歴史
山幸彦海幸彦縁起絵巻(天井絵)の解説

肥前一宮 與止日女神社

巻五 兄の不実を怒り、潮満、潮干の玉を使う

釣針を返した弟と、受け取る兄に、どんなやり取りがあったのか、ともかくも口論が始まった様子。

「あまりにもお責めなさる兄上。この場限り、兄とも思いません。」というより早く、弟は、潮満の玉を水に浸けて、二~三度振った。たちまち潮が満ちて、兄の首のあたりまでたたえた。

「弟よ、降参だ、助けてくれ」
とわめき立てる兄、そこで潮干の玉を振ると、たちまち潮は引いた。かわかられた兄は、たいそう腹を立てた。怒った弟は、ふたたび潮満の玉を振った。初めは首まで満ちた潮が、今度は眼や鼻や口のあたりまで、水かさを増す。

とうとう、兄は兜を脱いで謝った。

「このうえは、子子孫孫に至るまで、お前の家来となり、年々の貢物も怠らぬ、助けてくれ」
と。弟はやがて潮干の玉で水を払うと竜王宮に帰って行った。

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場面 五十四~五十五

緑の松の中に、桜が爛漫と咲きにおう。これはすでに見慣れた兄の住居。口論の果てに、弟は、竜王伝授の潮満の玉の術を使うことになった。ひもを通した玉を、掌に握りしめて、二~三くるくると振った。

場面 五十六~五十七

たちまち、ザ、ザ、ザと水音がしたかと思うと、塩水が吹き出した。みるみる、兄の身を包んだ。
「うわあっ、たいへん、こりゃあ、なんとしたことだ。」
と、細い兄の体は、湧出した潮水に翻弄された。

兄の悲鳴を聞いた弟は、やおら潮干の玉を振って、水をひませた。

辛い潮水をしこたま飲まされた兄は、げんなりとなった。が、しばしの時が経つと、われに返った。
「なんだ、潮水を出したり、引っ込めたり。からかうのも休み休みにしろ。

いま限りに、おまえなぞは、弟でもなければ、兄でもない。」と罵声を浴びせた。

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場面 五十八~六十

全身、ぬれねずみとなった兄。髪は乱れ、鬢(びん)のあたりからは、ポタリと、水が滴る。

胸もとの水を絞りながら、いまいましげに、弟を罵倒する。

簀子の端で、平身低頭の体(てい)の弟が、あんまりな兄の態度に、胸の高鳴りを押さえながら、怒りをこらえている。桜の花びらが、しず心なく散りかかる。

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場面 六十一~六十二

弟は、ついに堪忍袋の緒が切れた。庭に飛び下りると、ふたたび、潮満の玉を取出し、激しく降った。

またしても、潮がものすごい唸りとともに、押し寄せた。みるみるうちに、兄の体は、水に包まれた。

手や足をばたつかせながら、兄は水の中を踊った。その波水の線の間に、ふたつの足、両の手、それに仰向く顔を、わずかに点じて、この場の緊迫感を表している。

場面 六十三

潮の中から、絶え絶えに声を尽くして、改心する兄の声を聞いた弟は、ふたたび潮干の玉を振った。

みるみるうちに潮はひいた。やがて、憔悴しきった兄の姿が現れた。いつしか烏帽子は脱げ落ち、もととりもびしょぬれ。まるでお化けのような形相。

両手を垂らして、見る影もない。すでにこの世の人とは思えない。

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場面 六十四~六十五

「わたしは、今日限りお前の家来いなりましょう。私だけではない。息子も孫も、子々孫々、一系ことごとくが、未来永劫、そなたの家来だ。これ、このとおり誓います。」

潮のひいたもとの兄の屋敷。板敷の間に相対する兄弟は、こんどは主客転倒となった。

兄は、烏帽子も潮水に萎えて、形が崩れている。水浸しの衣服もずり落ちて、もろ肌もあらわである。

春光が、さんさんと輝き、風もないのに、桜の花が、ひとひら、ふたひら、兄弟の膝のあたりに散り敷く。

場面 六十六

「それでは、わたしはこれでお暇を。」弟は、庭に降り立った。

「もう行かれるか、それでは、お気をつけて。」

「兄上、さらば。」
と2人お別れのあいさつ。弟を追って、はだしで庭に立った兄は、腰をかがめ、揉み手をしながら、弟を見送った。

奴袴の股立ちを執ると、浜辺の水を避けながら、弟は立ち去って行った。

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場面 六十七~六十九

浜辺に出ると、沖合から打ち寄せる波が、岩を噛み、浜に砕けている。待たせてあった供人たちが、弟の姿をみると、急いで船を差し寄せてきた。

弟の乗船と同時に、船は波の上に漕ぎ出された。海中の異形(変わった生き物)たちも、それに従った。

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場面 七十~七十二

犀(さい)に乗った武将。頭上には、狼を表した冠をかぶり、ふさのついた打ち掛けを着ている。

手には、前方の弟の船を、きっと見守っている。後ろに、頭に魚形、体は人間という異形の2人が、矛や熊手をかついで、ザンブ、ザンブと水中の波をかき分けて行く。

すでに見覚えのある鷁首(げきす・水鳥)の船である。犀・獅子・麒麟などに乗った異形の従者たちが、弟の船の先駆をつとめる。

荒れ狂う大波の中を、木の葉のように翻弄されながらも、一躍、竜王宮を指して漕ぎ進む。

船も、水手も儒者も、またそのさしかける蓋(かさ)までが、前に見た図もそっくりではないか。

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場面 七十三~七十五

犀に乗った従者の一人は、早くも竜王宮に到着した。

波を蹴って、鼻息荒く、犀が浜に躍り上がる。騎乗の男は、後ろの弟は、いkがなるらんと、降り向いている。

浜辺の松が、風をはらんで、清らかな音を立てている。

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場面 七十六~七十七

「あっ、みえた、みえた。弟の船が、だんだんと近づいてまいりましたぞ。」
と、王宮の門に立つ役人が、目ざとく、一行の船をはるか沖合の波の中に発見した。

なにはさて、龍王様に、この由を申し上げん。

場面 七十八

やがて、弟の船は浜に着いた。弟は、船から飛び下りると、竜王宮に急いだ。

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場面 七十九

画面の右手に、日本国に供奉した武将や水手たちが、宮殿の階下に平伏して、つつがない帰着の報告を元言している。

弟の帰参は、瞬く間に、宮殿の上下に報じられた。

場面 八十

宮殿の中に、褥(しとな・しきもの)を敷いて対座する龍王と弟。皮弁(ひべん)の冠をかぶり、着飾った龍王は端座して笏(しゃく)を構えている。烏帽子・狩衣の弟と、褥の色や文様をたがえて、身分の相違を描きわけている。

場面 八十一

萩のさきこぼれる坪庭の格子を隔てて、美しい女官や子どもたちが、忙しげに行き交う姿がみえる。

弟の帰参は、後宮にも伝えられ、やがて姫君の耳にも報せれたのであろう。

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場面 八十二~八十四

姫君の後宮、女官たちの出入りが激しい。「御方様、弟様は、やがてこれへ御渡り遊ばします。早くお支度をなさいますように」と女官の一人が、口早に告げる。

唐草文様の豪華な敷物の上には、二人の女官が、気忙しく腰を宙に浮かせている。

障子を引き開けた奥は、姫君の帳台の間か。大袿(うちぎ)が脱ぎ捨てられている。

広い板敷の間に敷物を敷き、立派な火桶を据えている。金銅金具を打った猫足のこの火桶は、部屋の豪華さをひときわ添えている。

姫君は、傍らに櫛笥(くしげ・化粧道具の箱)を置いて、老女に髪を結わせている。

角盥(つのたらい)に烏頭(うず)の水瓶(みずがめ)を入れて、理髪の水を運んでいる。二階棚には、輪花形(りんかがた)の折敷(おしき)に、果物や菓子が盛られている。

巻六に続きます。







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by kusennjyu | 2016-11-18 16:45 | 歴史学習会 |Topに戻る