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千寿の楽しい歴史
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2016菅原道真公絵巻(天井絵)の解説・巻二前半・千寿の楽しい歴史
菅原道真公絵巻(天井絵)の解説・巻二前半

肥前一宮 與止日女神社

巻二 道真、邸の紅梅に別れを惜しむ

道真は罪状が決まって、23人もいた子供たちのうち、男子4人はそれぞれ4ケ所に分けては配流となった。姫君たちは京にとどめ置かれたが、幼少の御子たちは、道真に同行することになった。

これを伝え聞いた人々の嘆き悲しみは、まことに深いものであった。さながら、父母を失い、いとしの子をなくしたのと同じような悲劇であった。

ところで、道真の屋敷は五条坊門西洞院にあり、邸内にはりっぱな紅梅の古木があった。のちの人々は、紅梅殿と名づけたくらいである。

折から、その梅が花の盛りであった。道真は、感慨深く、その梅を眺めた。

(東風吹かば匂ひ起こせよ梅の花 主なしとて春を忘るな)。

同じように、桜の花にも一首の述懐を添えた。

この歌に感じてか、その梅は、京から八重の潮路(しおじ)を飛び越えて、筑紫国の道真お在所にまで飛んだという。飛梅の名は、これに由来するのである。

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場面 二十二

京の五条坊門西洞院なる道真の邸。みごとに紅梅の老樹がある。八重の大きな花が、いまを盛りに馥郁(ふくいく)と清い香りを漂わせている。

桜の花も梅の花と妍(けん)を競い、まさしく爛漫の春である。その春に背いて、これから西海配流の旅に出る道真の心は暗い。

場面 二十三

暗澹(あんたん)たる心の道真が、居室の妻戸を押して開くと、紅梅がいまし盛りである。
道真は、一瞬、感傷にふけった。「どうか、筑紫のはてまでも匂いを吹き送ってもらいたいものよの。余がいないからとて、春を忘れるでないぞ。

場面 二十四

いよいよ、道真の出立(いでたち)である。早朝から、邸前に検非違使(けびいし)の一行が到着した。廷尉(ていじょう)を采配とする一行は、放免・否長・侍など、格式どおりの一団が編成されていた。馬のいななき、蹄(ひずめ)の音。綺麗を尽くした服装や武具甲冑の金属音が、不気味に邸内にこだまする。

道真、配流の旅に出立

鎮西への旅は、船路である。初めての船中、波の上はまことに不安なものであった。沖吹く風に眼を覚まし、岩に打ち寄せる波には物思いはいや増す。

思い出すのは、京の事ばかり。それにつけても前途の不安は募る。

貞観13年、大学寮の試験に及第したのが26歳であった。以降、五代の帝に暦事(れきじ)」してきた。道真の追憶は、次から次へとはてしがない。

いま、西海の波の上に左遷という不名誉な名を得て、漂うている。一本の木にも春秋がめぐるように、人間の一生の哀楽は常なきためしという。前世の宿業(しゅくごう)とあきらめて、罪を懺悔(ざんげ)して西方極楽世界に順次往生を頼む心も、おぼつかないものである。道真は二首の詩をつくった。心残りなのは、京に残した北の方のことであった。

(君が住む宿の梢を行く行くと 隠るるまでにかへり見しかな)

歌に託して、思いははせ、涙にかきくれた。

また、秋霧の中に雁の鳴く声を聞くと、思わずも口号(こうごう)の詩(書き付けないで、口ずさむ詩)が生まれた。

その詩は、いつぃか宋朝人の知るところとなり、海の彼方の国で口ずさまれた、という。鎮西に着いたが、哀れなことが多かった。その悲憤は、日夜の詩に託されていた。

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場面 二十五

やがて、一輌の枇榔(びろう)毛の車が引きいれられた。前簾は巻き上げられている。中には、直衣(のうし)姿の道真が端座している。

場面 二十六~二十七

「うぬっ、こいつめが。前右大臣道真さまのお通りをじゃまだてするのか。」前駆の2人が、路上の通行人たちをとがめている。「わしら、荷駄を引いて里に帰る途中。なんで、そんな大それたことを。」「どうか、お助け下され」

これを見た蓑をつけた旅人は、「かかわりあってはいられぬ。」と、一目散に去って行った。

一方、弓を手にした随身の1人が、行列から駆け出した。「おい、こら、こら。里人に手荒な真似は禁物じゃ。早く離してやれ。」と声をかける。

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場面 二十八

浜に寄せては返す波の音が、人々の耳にも地鳴りのように聞こえ始めた。車の中で瞑目する道真の心にも、来し方行く末を思って、さまざまな思いが波の音に紛れながら、去来するのであった。

場面 二十九~三十

水手(かこ)の漕ぐ4丁櫓の船である。艫(後部)に寄って板屋形がある。道真の姿はこの中か。子供や子犬までが便船している。

艫の上に上がって遠望する老人。「いったい、あの島、もうどこであろうな。」と独り言。後ろに繋いだ小舟には、薪(まき)や水がつみこまれている。

旅といえば、酒は付き物。子どもが重そうに手に抱えるのは、酒を入れた太鼓樽。「このお酒、どこに置きまするか」。話に夢中の人たちには、どうやら耳に入らぬらしい。

「さあ、これからは一路、筑紫まで船旅なるぞ」「どうじゃ、お手前、一献いかがでござるかの」と、早くも銚子・土器を持ち出す男もいる。

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場面 三十一~三十二

行く手に、霞を隔てて陸地が遠望される。四国か、あるいは中国であろうか。とこうするうちにも、船足はいっそう延びて、海路を矢のように進む。

折から、沿岸近くの岩礁に海鶏の姿が見える。淡い彩色ながら、瀬戸内海の海面が、はてしなく広がる。


続きます。





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by kusennjyu | 2016-12-03 15:19 | 歴史学習会 |Topに戻る