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千寿の楽しい歴史
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童話 長田山の竜神と子どもたち(続)①
童話   長田山の竜神と子どもたち(続)①

鶴記一郎著

「ふるさと昔ばなし」にみやま市瀬高町の鶴 記一郎氏が投稿したものです。
 著者は亡くなりましたので、福岡市在住の娘さんの承諾を得てあげています。


お盆前後の故郷往復の楽しい民俗移動も、一応納まり、さしもの暑さも和らいだ晩夏のとある朝でした。それもまだ明けやらぬ午前6時過ぎ、玄関で戸を叩く少年の声に目を覚ましたのでした。

「私は竜太郎です。すみません。お願いします。」

そうだ。竜太郎といえば、4・5年前長田山の竜神の子どもで一時的に竜神の子どもから人間の子どもに変化した竜太郎君です。

「おい。定男。急いで開けてやらんか。」と父は言いつけました。
まだ眠りから覚めやらぬ定男は両手で目を擦りながら、玄関を開けると竜太郎は言いました。

「定男さん。早朝からごめんね。実は母が2・3日前から体調を壊して寝込み、人間が腹痛を催すと、よく利用する薬はないですか。それからついでに頭痛によく効く薬もあれば少し貰って来なさいと言われたのです。

定男さんも一緒に清水山に来てくれませんか。一度ぐらいは、私の家に来て下さいよ。」


定男は「清水山の頂上ですか。ウーン・・・」と渋った返事をしました。

すると竜太郎は「ここから私の家までは、例の竜神一族の特権である空中飛行で行きます。2・3分で着きますよ。」と言うのです。

定男はちょっと考えてから「そんなら行くよ。薬は家にあるから、ウント持って行っていいよ。」と答えました。

「そうだ。竜太郎はあの時は1つ年下だったから、現在は15歳だろう。」

「あれ、定男さんは何でもよく記憶していますね。朝食は、山の家で取ることにして直ちに出発しよう。定男さんのお父さん、お世話にかけました。」と竜太郎の声がしたかと思うと間もなく、2人の姿は消えていました。

竜太郎の母親は床に就いていたが、定男の声がすると途端に起き上がりました。
「すみませんね。ご心配おかけして。定男さんの一声で頭痛は一瞬にして消えて行った感じですよ。」と弱々しい微笑を浮かべました。

定男は「おばさんは、ご病気で大変ですね。早くよくなって下さいよ。」と声をかけると

「大したことはありませんよ。それより定男さんは、もうすっかり1人前の人間になりましたね。竜太郎がずっと昔に竜神の子どもが人間界に変化した頃から、人間との交際がボチボチはじまりましたが、人間の習慣にはいろいろルールがあって中々うまく行きませんよ。私もそういう疲れがたまって寝込むようなことになったんですよ。」と青白い顔で答えるのでした。

竜太郎の母親は時々登って来る村人たちとも」親しくなり楽しくもあるがなかなか心労も多いらしいのです。

2人の子どもが人間の学校に行きたいなんてひそひそ話しているのを聞いてしまったのです。それを聞いた竜神の父はびっくりして、おこったらしいのです。それやこれやで、気の重い日々を過ごすことになったらしいのです。

朝食は携行食で済ました竜太郎と定男の2人は何かの準備が出来上がったのか、

竜太郎は「これから竜神の学校訪問に行きましょう。」と大声をあげました。

定男はびっくりしました。

「人間が、そんなところに行っていいのかな。その学校は竜神一族の幹部養成所で、大事な聖域であり秘密の場所にちがいないと思っていたけど。」と定男が問うと

竜太郎は「そういえば、そうかも分かりませんが、自分の父である竜神は九州界隈では誠実で練達の長さということで、竜神一族の中では信頼ある人物だから話して貰えるでしょう。私と一緒だから怖じけることはありませんよ。堂々としていて下さいね。」と言うのです。

定男は「竜太郎君には負けた。それじゃ、決めた。行くよ。」と言い終わるや白い雲が現れ、あっというまに定男と竜太郎君の体は学校らしきところにありました。

次に続きます。

「有明文化圏断章」鶴記一郎著(個人出版)より。
by kusennjyu | 2011-01-17 20:08 | 芸術と文学・童話
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