2016瀬高町出身の画家・江上 茂雄の紹介・千寿の楽しい歴史
瀬高町出身の画家・江上 茂雄の紹介
みやまの人と歩みより
絵画の制作にあたって
江上茂雄は、明治45(1912)年6月18日に山門郡瀬高町河内(現、みやま市瀬高町河内)に父茂三郎と母アキノの長男として生まれます。
幼いころから絵を描くのが好きだった茂雄は、大正11年ごろからクレヨン画を描き始め、高等小学校入学後は水彩画にも挑戦します。
昭和2(1927)年に高等小学校を卒業した茂雄は、15歳で三井三池鉱業所建築課に入社し、それ以来、昭和47年の退職まで45年間、サラリーマン生活を送ることになります。
経済的には裕福とはいえませんが、このころから仕事が終わってからの少しの時間や休日を惜しんで趣味の絵に没頭する「日曜画家」としての二重生活が始まります。
茂雄の作品群
茂雄の初期の作品としては、昭和2年ごろの高等小学校卒業直後に描かれた貝殻の習作や、翌3年の大牟田近郊の田園風景を描いた作品、同じく大牟田市内の喫茶店や楽器店を描いた作品などが残っています。これらは、すべて水彩画で、茂雄の写実的な画力の高さを示しています。
昭和20年から30年代半ばにかけて描かれた作品群は、画材としてはクレパスが用いられ、そのほとんどが風景画によって占められています。
この時期の代表作品は、「林泉紅葉」や「雪降る」「夏池」「葦(あし)の空」で、特に「葦の空」は茂雄が「風景画家としてやっていけるという手応(てごた)えを実感することができた」記念すべき作品です。しかし、画材を水彩からクレパスへと変え、厚塗りなどの独特の手法がカビの発生原因となり、この時期のほとんどの作品が画面の損傷や剥落(はくらく)にさらされてしまいました。
この反省の上に昭和30年代半ばから、画材をクレパスからクレヨンへと変え、昭和40年大牟田の
それと同時に『大牟田五十景』と題された木版画の制作にも取り組み、大牟田の工場地帯や名所旧跡など、葉書サイズの多色刷り木版画50数点を完成させます。さらに、抽象画を含む約200点実験的即興画『私の手と心の抄(しょう)』(昭和35-47年)を完成させるなど、旺盛な活動を展開しています。(せいらん)の
このころの代表作としては、岡鹿之助の影響を受けたメルヘン的作品「水源地風景」、大牟田の海岸埋め立て地をモチーフにした「海のくもり日⒈、Ⅱ」「青藍(せいらん)とき」「黄耀」など円熟味を帯びた作品を次々に製作しています。
退職後の作品群
昭和47年、茂雄は45年間務めた職場を退職し、翌年荒尾市に自宅を建て転居します。
サラリマンと「日曜画家」の二重生活からようやく解放され、初の個展を井筒屋デパートで開催します。
茂雄は退職する時点でクレヨン・クレパス画から水彩画に移行する決意を固めたようですが、退職後数年間は思うように描けないスランプ状態に陥り、それに追い打ちをかけるかのかのように眼病を患ったり、脳血栓で入院したりという想定外の事態も重なり、本格的に創作活動を再開するのは昭和54(1979)年以降になります。
水彩画の制作は停滞してものの、退職後の茂雄は『大牟田五十景』に続き、木版画の連作『私の筑後路』の制作を始めます。このシリーズは、大牟田・瀬高・柳川・八女などの名所旧跡を題材として、昭和48(1973)年ごろから平成26(2014)年に亡くなるまで生涯にわたって取り組まれた茂雄のライフワークで、150点余りの正品が制作されました。
「雪降る」(『江上重雄作品集』より転載)
路傍の画家として
体調が完全に回復した昭和54(1979)年からは、現場写生による水彩風景の制作を開始し、いつしか「路傍の画家」と呼ばれるようになります。
同58(1983)年には母アキノを亡くし、同62(1987)年には妻のマサ子にも先立たれてしまいますが、現場写生は元旦と台風の日を除き毎日継続されました。屋外で1日1枚を完成させることを自らに課し、その実践は平成21(2009)年の春ごろまで続けられ、その間に描かれた作品は約一万点といわれています。
平成に入り福岡市美術館で3回の個展を開くなどして徐々にその名を知られるようになり、同23(2011)年には二男の計太が中心となって『江上茂雄作品集』が出版され、同年の弟32回熊日出版文化賞特別賞を受賞します。
101歳となった平成25(2013)年秋にカルタ・は福岡県立美術館、田川市美術館、大牟田市立カルタ・歴史資料館の3館で「江上茂雄展」が大々的に開催され、「路傍の画家 江上茂雄」が一躍脚光を浴び、それを見届け安心したかのように翌26(2014)年2月26日に死去します。
生涯に描かれた作品はスケッチなどを含めると二万点を超えるといわれ、その作品群のほとんどは本人の遺志により福岡県立美術館に寄贈されました。
終わります。
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